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執筆者の写真Aiko Sada

JoVE撮影に思う実験手技の継承と再現性

昨日はプロトコルビデオ論文JoVE(Journal of Visualized Experiments)https://www.jove.com の実験風景とインタビューを撮影した。動画の完成が楽しみ。


JoVEは、実験手技の動画を用いた視覚化により、科学コミュニティにおいて問題となっている実験の再現性の改善につなげることを理念としている。自分のモチベーションとしても、業績になるというよりは、コミュニティへの貢献という意味合いが大きいかな。


研究室(バイオ系)において、実験の手技的なところは、テキスト形式のプロトコル&実技によって、人から人へ伝わるのが一般的と思うけど、大学だと人の入れ替わりが激しいし、他のラボの人にちょっとした実験のコツを伝えるのも難しい。論文のmethodsには詳細は書けないし。


新しいラボメンバーが実験をやろうとすると、最初は上手くいかないことも多々ある。その実験をできる人がラボから出たら、研究室から技術が失われてしまうという話もよく聞く。教えるのに手間と時間がかかるという問題も。ましてや他の研究室でやられている新しい実験を立ち上げようとすると、簡単なところでつまづく。直接教わりにいくのが一番早いのだけど、最近は実験の手法が多岐にわたっていて、なかなかしんどいものがある。実験手技の継承って難しいなぁ、どうにかならないかなぁ、と日々思っていた。


最近では、実験を教えるときに学生がスマホで要所要所を撮影している姿をよく見かける。自分は、紙のプロトコルに必死に書き込んで覚える(それも大事だけど)のが普通だったので、最初は正直抵抗もあったけど、動画の便利さに気づいてからはなるべく動画で記録を残すようにしている。共同研究者が、動画で実験風景を送ってくれたりもして、簡単な実験であれば十分再現できる。YouTubeなどにもちょっとした実験の手順が動画で示されたりしていて、有用だと思う。


JoVEの存在を知ったのはコーネル大のポスドク時代である。生体イメージングを専門とする共同研究者から、詳細はこの動画のような感じだよ、と私が知らなかった実験手技を動画で示した論文が送られてきて、こんなのがあるのかと思った記憶がある。聞いてみると、イメージングの研究者の間では、JoVEの論文は重宝しているらしい。


帰国後も、ちょくちょくJoVEの話を周りの研究者から聞き、今回は少々マニアックだけど、マウスの口腔ケラチノサイトの培養についての論文を投稿してみた。https://www.jove.com/t/62820/isolation-culture-primary-oral-keratinocytes-from-adult-mouse


論文投稿のプロセスとしては、


(1) JoVEのテンプレートに沿った形で、詳細なプロトコルを書く。正確かつ明確に。人にものを伝えるのは本当に難しいなぁと思うくらい内容が細かいけど、頑張って書く。実験の過程に加え、使用した試薬や器具など、全ての情報をTableにまとめる。


(2) 論文投稿してリバイス。今回は、いくつかの追加実験と説明などを加筆。そこまで大変ではなかったけど、最初の投稿からアクセプトまでなんだかんだ4ヶ月。


(3) 論文発表される(まずはwritten protocolのみ)。


(4) 動画撮影用の原稿作り。


(5) 動画撮影(今ココ)。撮影は福岡から担当者が来てくれた。映像は、スマホなどで撮るのとは違って、ハイクオリティ。非常に小さい組織を扱うので苦戦していたが、色々工夫してきれいに撮ってくれた。インタビュー部分は、暗記してきてくださいと言われ、必死に練習したが、当日はカンペを用意してくれていた。

(6) 動画が発表される。オープンアクセスにすると$3900で高いけど、撮影料込みと思ったら、妥当な価格かな。JoVEは購読していない大学なども多いと思うので、予算に余裕があれば、オープンアクセスにしておくのがbetter。


ということで、そこそこ手間と時間とお金がかかって「めんどくさい」という気持ちと、役立つ情報になるから頑張ろうという気持ちが交錯しつつも、総合的には出してよかったと思う。


佐田



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